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アジア各国での電動二輪、三輪の導入【テラモーターズ株式会社】

アジアにおける電動二輪、三輪車のビジネスチャンス

インド、ベトナム、バングラデシュ… 。アジアの国々で、軽快に駆けぬけてゆく、電動の二輪スクーターや三輪タクシー。彼らにとって国民的な移動手段であるこの乗り物の利便性、経済性を、日本の技術が支えていることをご存じだろうか。テラモーターズ株式会社。2010年に電動自動車メーカーとして設立され、瞬く間に日本国内トップシェアを獲得しながらも、つねに海外市場に主眼を置いているグローバル・ベンチャー企業だ。

市場開拓の舞台となっているのはアジア。もともと二輪スクーターや三輪タクシーが普及しているアジアの国々では、ガソリンの燃費の悪さ、環境負荷の大きさから、電動の二輪、三輪車へのニーズが高まっていた。テラモーターズはそこにビジネスチャンスを見出し、フィリピン、ベトナムへと市場を拡大していた。さらに次なる国の市場開拓をめざそうとしていた2015年、ひとりのビジネスパーソンが、新たな仲間として加わった。上田晃裕。桃山学院大学 経済学部の卒業生だ。

現地のショールームでテラモーターズの製品をPR    アジア各国でタクシーとして活躍する電動三輪車

「マーケットイン」の発想でさらなる市場開拓を担う

彼は卒業後に日本の大手家電メーカーに就職。桃大での留学経験などで身につけた国際感覚を武器に、本社から中近東/アフリカ販売会社へ赴任し、現地でのビジネス拡大に尽力していた。やる気に満ちあふれていたが、しだいに、大企業ならではの意思決定の遅さ、保守的な考え、ハングリー精神・チャレンジ精神の希薄さに危機感を抱くようになっていた。また当時は製品の作り手である企業の視点や計画を優先する「プロダクトアウト」という発想がその会社の主流だった。

一方、彼はそれとは対照的に、作り手よりも市場・ユーザーの視点に立ち、客が本当に必要とするもの、買いたいと思うものを作る「マーケットイン」という発想を実践したいと考えていた。「既存の大手企業の方法では、世界で輝き続けるのは困難なのではないだろうか」。組織が大きすぎて動きが重い企業よりも、意思決定や行動がスピーディーなベンチャー企業へと心が傾いていた彼にとって、設立当初から「世界的日本企業を創る」というビジョンを掲げていたテラモーターズとの出会いは、必然だったといえる。

「win-winの関係」を築き、約1年で0円から10億円へ

期待していた通り、上田は入社直後からバングラデシュへ赴任し、現地での事業立ち上げを任された。狙いをつけたのはフォリドプールという町。そこではエネルギー(天然ガス)不足のために電動三輪タクシーが普及し始めていた。当時主流だったのは中国製のもの。しかしバッテリーの品質についてドライバーたちは少なからず不満を抱いていた。不満があるということは、それを満たす製品を販売すれば売れるはず。テラモーターズの製品は充電器の機能が優れていてバッテリーへの負担が少なく、中国製よりも寿命が長いというアドバンテージがあった。「この町の人々が本当に必要とするものを、提供することができる」。まさに、彼が重視する「マーケットイン」のビジネスチャンスが、そこにはあったのだ。

現地の工場の一角を借りて生産体制を確保し、販売価格は中国製とほぼ同額に設定。ドライバーに対して「中国製とのバッテリーの違い」を明確に訴求するチラシを配るなど地道な宣伝活動も行った。上田をはじめスタッフの尽力により、バングラデシュにおけるテラモーターズの1号店がオープンしたその日、予想を超える数の客が続々と押し寄せ、瞬く間に予約数が上昇。テラモーターズにとって0円だったバングラデシュの市場は、約1年間で10億円規模へと成長した。

さらにその成功は会社のためだけではなかった。効率の良い電動三輪タクシーによるドライバーの収入増、現地生産がもたらす雇用創出や日本式モノづくりの教育、電動車による環境負荷の低減など、現地の人々の暮らしをも豊かにした。事業拡大と社会貢献。上田が仕事に携わる上で大切にしている「win-winの関係」を築き、皆が幸せになれるビジネスデザインを達成できたのだ。


新しい形の「グローバル日本企業」へ

バングラデシュでの業績が認められ、彼はテラモーターズ事業本部長、インド/バングラデシュ/ベトナムの各国現地法人社長を兼任し、合計事業規模を2倍に拡大。今後はアジアにおけるさらなるシェアの拡大、パーソナルモビリティ(近未来の個人向け移動ツール)の電動化のマーケットを牽引すること、新しい形の日本企業を創っていくことなど、そのビジョンは大きく前進している。彼にとってのビジネスデザインとは、ひとつの事業にとどまることなく、社会を、世界全体を幸せにしていくことなのかもしれない。

(インド マネサールの工場にて現地スタッフと)

(※この内容は2018年6月取材時のものです)

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