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人生の選択がつなぐ未来ー英語教師としての挑戦と使命ー

中学時代の担任の先生との出会いがきっかけで教員を志望した上野さんは、一度は美容師を目指して専門学校を卒業し、3年遅れで桃山学院大学に入学しました。国際教養学部 英語・国際文化学科で、年下の学友と切磋琢磨し、教育に関係するボランティア活動、留学生をサポートするレジデンスアシスタント(RA)など、あらゆる機会を捉えて自分を高め、教員になるという夢を実現されました。これまでの歩みと、目指す教員像、そのための自己研鑽の計画を語ってもらいました。

◆ 身近だった「先生」

母が保育士で、先生と呼ばれる存在が身近だったためか、保育園や小学校の時も先生という仕事に興味はありました。決定的な影響を受けたのは中学時代の担任の先生が自己紹介で「なぜ先生になったのか」を話されたことでした。私も「心も体も大きく成長する、多感な中学生時代にかかわりたい」と思いました。ただ、高校卒業後は美容師の専門学校に進みました。美容師の国家試験も通り資格を取得しましたが、今振り返ると、教師になる夢をあきらめたところもあったと思います。

専門学校2年の時にメイクの研修で米国・ニューヨークに行った経験から、再び教員志望の気持ちが沸き起こりました。日本とは違う社会に興味を感じましたが、英語が得意ではなかったので、自分の思いがなかなか伝わらない、英語ができたらもっと伝わって楽しいだろうな、と痛感しました。その時「教師になりたい」という気持ちと英語への思いがつながり、挑戦を決意しました。

高校卒業後、一度は美容師を目指した上野さん
ニューヨークでの経験が「もう一度、教師を目指そう」と考える原動力になった

◆ 夢の実現に集中した大学時代

専門学校修了後1年間、アルバイトしながら大学受験の準備をしました。教員資格を取得できる大学を探し、自宅(岸和田市)にも近く、国際交流の取り組みが充実している桃山学院大学を選びました。

同級生は3歳年下です。「気にならない」と言ったらうそになりますが、教員になるための勉強に集中しようと思っていました。それでも「人数が足りないから」と頼まれたバドミントン部に入り、オープンキャンパスのスタッフなどいろいろなことに挑戦しました。オープンキャンパススタッフの先輩から留学生をサポートするレジデンスアシスタント(RA)のことを教えてもらい、留学生と同じマンションに住んで生活のお手伝いをしました。英語を磨くだけでなく、異なる文化に触れることが楽しかったです。

在学中は、RAなど留学生をサポートする活動を通じて積極的に異文化交流を行った

また、子ども食堂のボランティアや小学校の指導助手など、教員の仕事につながるような活動にも積極的に参加しました。困難を抱える家庭の子どもや小学生と触れ合ったことが、今、担当している中学生の気持ちや抱えている問題を理解するのに、とても役立っています。

◆ 教職課程で出会った友人・恩師

3年遅れの入学でしたので、友人が出来なくてもかまわないと思っていましたが、教職課程の授業で同じ志を持つ学生と知り合い、切磋琢磨できました。同じ目標に向かって努力する友だちが身近にいたことで、「私も頑張ろう」と怠けたい気持ちを封じ込めました。図書館の自習コーナーでいっしょに教員採用試験の過去問の勉強などに取り組みました。

恩師にも出会いました。2024年度いっぱいで定年を迎えられた島田勝正教授のゼミ(英語教育学)に所属し、教科指導の理論はもちろん、実際にどのような指導をするのか実践的なことも教えていただきました。先生の指導を受け、単に文法などの知識を教えるのではなく発問を工夫し対話しながら子どもたちに気づかせ、「あっ、わかった!」という瞬間をつくりたいと思っています。

恩師である島田勝正教授(右)
1月22日に実施された退任最終講義には、現場に駆けつけた

私が大学を卒業してから先生が『「気づき」をうながす文法指導—英語のアクティブ・ラーニング(ひつじ書房)』をお書きになり、その出版記念としてご献本いただいたのですが、この本は当時教えていただいたことを振り返るだけでなく、職場で授業の展開を考えるときなどのヒントにしています。
先生との出会いは、今も教壇で役に立っています。

島田教授の著書『「気づき」をうながす文法指導—英語のアクティブ・ラーニング』は、
中学校で教鞭をとる上野さんにとってバイブル的存在だ

◆ 厳しいがやりがいの大きい仕事

教員の仕事は教科の授業だけでなく、生徒指導や家庭訪問、事務的な仕事など多岐にわたります。バドミントン部の顧問もしています。教員になって3~4年目までは、翌日の授業の準備が終わるのが午後8時、9時ということも珍しくありませんでしたが、5~6年目になり、これまでの蓄積を生かして授業準備ができるようになり、少し余裕が出てきました。不登校など困難を抱えている生徒の家庭訪問や定期的な電話連絡など生徒と触れ合う時間を省くことはできないので、すき間時間に事務仕事を終えて時間を捻出するようにしています。

2年間不登校だった生徒を担任し、週一回の家庭訪問や近況を聞く電話連絡などを続け、その子が卒業式に出席できた時は、感動しました。「学校に来てみよう、行事に参加してみよう」と思えるようになるまで長い時間がかかる変化を感じられ、教員として子どもたちに関わるモチベーションになっています。今も不登校や別室登校の生徒をフォローしています。

桃大の大学案内(在学当時)でもインタビューが取り上げられていた上野さん
当時の記事では「子どもたちに、生きた英語を教えたい」と語っていた

◆ 海外で生活して体験を生徒に還元したい

「英語って面白いな」と思い、海外に興味を持ってもらえるような授業をしたいと思っています。生徒が新鮮に感じられる指導が大事だと考えていて、旅行や仕事で海外に行った時の話を交えると、子どもたちは興味を持って授業を聞いてくれると感じます。専門学校時代にニューヨークに行った時のことを話すこともありますし、英語だけでなく美容師の仕事に興味を持つ子もいます。

教室では、常に生徒一人ひとりと向き合いながら「生きた英語」を教える意識をしている
(写真提供:泉佐野市立第三中学校)

私は海外に旅行に行ったことはありますが、長期間住んだことはありません。今、卒業旅行で訪れて「いいな」と思ったスペインで1年生活することを計画しています。そして、海外で生活し、戻ってきてその体験を子どもたちに還元したいと考えています。

最後に、教員を目指す後輩学生には「いろんなことに挑戦して!」と言いたいです。私は大学内でできることはやりつくしたと思えます。英語教員になりたいという目標に関係しそうなこと、子ども食堂のボラインティアや小学校の指導助手、RAなど、大学時代に体験したことが、教師になって活きています。後輩の皆さんにもいろんなことにチャレンジしてほしいと思います。

「今後、私自身も様々なチャレンジを通して英語教師としての質を高めていきたい」
と話してくれた

▼ 在学当時のインタビュー記事

「子どもたちに、生きた英語を教えたい。」

▼ 島田勝正 教授著『「気づき」をうながす文法指導—英語のアクティブ・ラーニング』

(※この内容は2025年1月取材時のものです。)