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学んだことは、「大切なのは、一人ひとりを想うこと」ということでした。

気になる、電車の子

 電車の中で障がいのあるお子さんが大きな声を突然あげたり、車内を行ったり来たり・・・。
 そんな光景を目にしたことは、皆さんあると思います。そんな場に居合わせた人を観察していると、できるだけ関わらないよう目線を逸らせたり、イヤホンで音楽を聴き始めたり。また、人によっては別の車両へ移られる様子を目にすることもあります。
 私は少し違っていて、その子のことが気になってしまうんです。(その子は)今、どんな気持ちなんだろうか。「楽しいのかな、緊張しているのかな、それとも何かに怒っているのかな・・・」という感じで。

 もともと、小さな頃から何か一つのことに固執するよりも、様々なことに興味を持つ子どもだったこともありますが、この学科で学ぶうちに、より多角的に「一人ひとりのこと」を考えるようになったと思います。

様々な視点で、福祉を学ぶことができる環境がある

 桃山学院大学社会福祉学科(現:ソーシャルデザイン学科)の良いところは、様々な視点で福祉を学ぶことができる点だと思います。
 先生を見ても、福祉の研究一筋の先生もいらっしゃれば、一般企業でお仕事をされたのちに福祉の世界へこられた先生もいらっしゃる。福祉は、特定の人や事柄だけのものではなく、社会全体のものであるということを、こうした環境のなかで実践的に学ぶことができたのは、とてもよかったと思います。
 そうした学びがあったからこそ、自分自身を含めて「この社会に生きる私たち一人ひとり」が、実は福祉の当事者であるという気づきを得ることができましたし、社会福祉法人四恩学園(大阪市)での学生活動立ち上げにもつながったのだと思います。

様々なバックグラウンドを持つ先生からの学びは、
刺激に満ちていました(長谷川さん)。

「高齢者のために」 から 「○○さんのために」

 コロナ禍の影響で、「外に出ること」も「外の人と接すること」もできないお年寄りがいる。それを知ったのは、四恩学園での聞き取り調査の時でした。基礎体力や免疫力を考慮した結果、施設内での感染拡大を抑えるためには仕方のない対策とはいえ、「日々の生活において、外的な刺激が減っている」ことに四恩学園の職員の方々も頭を悩ませておられました。
 そこで、私たちが提案したのが、お年寄りの思い出を聞き取り、その場所をお年寄りに代わって私たちが旅をし、更には現地の様子を収めた動画をご覧いただく「模擬外出」でした。

 お年寄りへの聞き取りは、お一人おひとりに担当の学生を1名割り当て、何度もお部屋に足を運んで行います。それは、聞き取りの回数を重ねる度に、お年寄りと学生の間に信頼関係が構築され、深まっていくことを期待しているからです。「本当のおじいちゃん、おばあちゃんと孫」のような関係になると良いな、そう思っています。
 それともう一つ、聞き取りには大学の授業で学んだ「回想法」という技術を取り入れています。これは、昔のことを思い出して言葉にすることで、脳の活性化や活動性・自発性・集中力の向上など、認知症の進行予防に効果があるとされる心理療法のひとつです。

模擬外出の取り組みは注目を集め、
これまで何度もメディアに取り上げられました。

 聞き取りが終わると、その場所へ学生が実際に足を運び、思い出の場所を巡ります。その時の動画を、後日行う上映会でご覧いただくのですが、この上映会にもひとつ工夫を加えています。それは、できる限り多くの感覚を駆使して動画をご覧いただく、ということです。
 動画の上映で、お年寄りが使う感覚は「視覚」と「聴覚」の2つです。そこに、別の感覚も使ってもらおうという発想です。
 例えば、2回目の企画の対象となったお年寄りは、愛媛県宇和島市出身でした。そこで、現地の動画をご覧いただくのと同じタイミングで、宇和島名産の「じゃこ天」を調理し、上映会を実施している空間をじゃこ天の香りで満たしました。すると、「観る」「聴く」の感覚に加えて「嗅ぐ」「味わう」という別の感覚が加わり、上映会がより豊かなものになりました。

上映会で提供したじゃこ天とみかん。
会場は、懐かしい宇和島の香りで満たされました。

 この発想は、聞き取り調査の中で「じゃこ天」の話が出てきたことに由来します。
 こういった工夫の背景には、単に「高齢者に思い出の場所の動画を届ける」というひとつの企画・作業を超えて「○○さんが喜んでくれるには、どんな工夫をすれば良いか」という気持ちに、携わった学生一人ひとりが変わっていったことがとても大きいと思います。
 「一人ひとりのしあわせをデザインする」という福祉にとって最も重要な原点のようなものを、この活動を通じてこれからも多くの学生が感じてくれると嬉しいですね。

【FIOREIの取り組みは、メディアにも多数取り上げられています】
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