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「糖質オフシリーズ」など くら寿司の様々なヒット商品を生み出す開発責任者【くら寿司株式会社】

健康によいもの、家族に食べさせたいものを求めて

ユニークでおいしいメニューを続々と開発し、つねに注目を集めている「くら寿司」。日本でその名を知らない人はいないといっても過言ではないだろう。多彩な商品の開発を担当している製造本部長は、桃大卒業生の久宗裕行。寿司のシャリを野菜に変えるという驚きの人気メニューも、彼が開発の責任者として手がけた商品のひとつだ。
くら寿司は、健康によいもの、家族に食べさせたいものを提供するべく、添加物(化学調味料・人工甘味料・合成着色料・人工保存料)を使用していない。しかし無添加をはじめた20数年前は、健康志向がそれほど評価されなかったという。「無添加からその先の商品開発として、なかなか次の手が出せず、健康によいものがつくれないかをつねに考えていました。カロリーオフか、糖質オフか。しかし米が大半を占める寿司では相反する課題。そこで思い切って『シャリをなくしてみる? 』という発想からアイデアが広がっていきました」。久宗の大きな挑戦が、その時、動きはじめた。

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驚きの「シャリ野菜」と創業以来初のリニューアル

議論の中で出されたひとつの案は、米の代わりに野菜をシャリにするという発想。ではどんな野菜がいいのか。例えば大根ならどうか。しかしそれでは刺身のつまと同じで、寿司にはならない。さらに議論を重ね、大根の酢漬けに決定。その長さや細さをどうするかについても、試行錯誤の連続…。着想から実現にいたるまで、数年を要したという。
2017年8月、くら寿司は、満を持して「シャリ野菜」を発売。その反響は、久宗の想像をはるかに上回るほど大きかったという。健康という開発テーマが、それほど多くの人に受け入れられたのだ。「ダイエットをしているお客様の反応はある程度想定していましたが、家族に糖尿病の方がいて外食を控えていたお客様が想像以上に多かった。改めてそれを知りました」。シャリ野菜の好評は、客からのさらなる要望を生み、「糖質オフ麺」「糖質オフ丼」へと展開。「糖質オフシリーズ」として拡充され、看板メニューとなっていった。
ヒット商品を開発しても、久宗の挑戦は終わらなかった。「自分たちの仕事に、つねにクエスチョンを投げかけています。『本当にこれでいいのか』を問いかける文化が社内にはあります。その中で、大きな挑戦ではありましたが、シャリの味を変えることに取り組みました」。創業以来41年変わることのなかったシャリ、寿司の命ともいえるシャリを変えるべく、久宗は世界中のあらゆる酢を試したという。たどり着いたのは黒酢。長期熟成・発酵させた黒酢にはアミノ酸が多く含まれ、健康維持や美容に役立つという。2018年7月末、全国の店舗で「健康黒酢のシャリ」が新たに導入された。

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おいしさ・健康・楽しさを世界へ

食事の選択肢が多岐にわたる今、くら寿司へ足を運んでもらうために、健康に加えて驚きや感動といったエンターテインメントの提供も大切だと久宗はいう。「その店にしかない『体験』の提供が必要です。寿司5皿に1回、ゲームでグッズが当たる『ビッくらポン!』をお子様に楽しんでいただいて、それがくら寿司のいい思い出になる、そんな『体験』も大切にしたいと思います」。
今後の目標は、すでに出店を果たしている海外での事業拡大だ。「寿司という日本の伝統的なもの、そのおいしさ、身体へのやさしさ、お店での楽しさを、世界の方々にもお届けしたい」。久宗が、次はどんな新商品を繰りだすのか。食の健康と喜びを未来へつなぐ、くら寿司への期待はふくらむばかりだ。

(※この内容は2018年12月取材時のものです)

【久宗さんのインタビュー動画はこちらから】