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パワーリフティングで日本記録を更新、南アフリカで開かれる世界大会に出場

パワーリフティングという競技をご存知だろうか。重量挙げ(ウエイトリフティング)がバーベルを頭上に差し上げる競技なのに対し、パワーリフティングは、▽肩にバーベルを担いで行うスクワット▽仰向けに寝転んだ姿勢でバーベルを持ち上げるベンチプレス▽床に置いたバーベルを腰の高さまで引き上げるデッドリフト――の3つの合計を競う「パワーリフティング」と、「ベンチプレス」の2種目がある。それぞれに体を守る着圧ウエアなどのギアを使うエクイップ部門と、使わないクラシック部門に分かれている。

阪口さんは69㎏級でパワーリフティング(エクイップ部門)の日本記録(413.5㎏、2022年5月)、ベンチプレス(エクイップ部門)の日本記録(156.0㎏、2023年2月)を更新した、若手のホープだ。2023年5月下旬、南アフリカ共和国で行われる世界大会に出場する。昨年の世界大会の出場権も得ていたが、入試や大学入学直後の勉学のために辞退した。初めての世界大会出場に阪口さんは「めっちゃ、楽しみです。3位以内入賞を目指していますが、競技仲間との海外遠征を楽しんできたい」と笑顔を見せる。

競技に挑む、阪口さん

高校2年で競技開始

小学生時代6年間は水泳、中学高校でソフトボールに打ち込んだスポーツ少女だった。ソフトボールでは強打の外野手として活躍し、全国大会出場も果たした。体のメンテナンスでお世話になっていた整骨院で、「愛ちゃんは筋肉があるから、パワーリフティングか砲丸投げが向いている」と助言され、高校2年の6月にネットで探したジムに通い始めた。「ソフトボールのトレーニングでも、ベンチプレスやスクワットに取り組み、パワーはありました。“得意”を生かせる種目を見つけた、と思いました」とトレーニングに打ち込んでいった。

競技を始めたときにギアなしで40㎏程度だったベンチプレスの記録が3か月で20㎏伸び、現在はノーギアで90㎏の記録を持つ。2023年2月の全日本大会で、ジュニア(19~22歳)のベンチプレスのエクイップ、クラシック両部門で優勝し、世界選手権の出場権を獲得した。

「自らに勝つ」魅力 仲間と支えあい

団体競技のソフトボールから個人競技のパワーリフティングに転向。トレーニングの成果で記録が伸びていく。「自分が強くなっているのが一目でわかるのが魅力です」と、自らと向き合うパワーリフティングの世界にのめり込んでいった。もちろん、順調な時だけではない。「記録が低迷する時期、ケガなどで伸び悩む時期など、波があります」というが、「一人ではなく、同じジムの仲間と励ましあい、楽しみながら取り組んでいるので、しんどいと思ったことはありません」と明るい表情が印象的だ。「耐えて成果が出るようになるのが楽しい」と苦しい時期も力に変えていっているようだ。

世界大会に向けて、トレーニングと調整に取り組む

大学での学びにも共通する「追求」

パワーリフティングは「引退のない競技」といわれ、80歳を超えても続けている人がいるという。「私は“追求”することが好き。自分自身がどこまで強くなれるのか。自らが問われている」と語り、競技を通じて精神的成長も遂げている。

追求する姿勢が問われる点で、「パワーリフティングとビジネスデザイン学部は似ているな、と思う」そうだ。兵庫県三田市出身で、進学先の選択では競技の拠点としている大阪市城東区のジムでのトレーニングと両立できるところを探した。ホームページを見て、「自由で、今までにない学部。ここでなら頑張れる」と感じてビジネスデザイン学部だけを受験、入学を決めた。課題解決を企業などの実践例に即して探求するPBL(Project Based Learning)科目で、下級生をサポートするLA(Learning Assistant)を務めるなど、学業でも挑戦を続けている。「LAなどを通じて様々な学びがあります。友達にも恵まれ、この大学が大好きです」と笑顔が弾ける。

学友や高校時代の恩師、友人も世界大会での活躍を祈ってくれている。クラシック部門105㎏、エクイップ部門160㎏の自己ベスト達成を目標に、南アフリカに乗り込む。

日本代表として南アフリカでの世界大会に挑む、阪口さん