高齢者に「模擬外出」をプレゼント【ソーシャルデザイン学科(福祉)】
2022年8月2日、ソーシャルデザイン学科(福祉)の学生を中心とした学生団体、FIOREI(フィオレイ、団体の詳細は後述)で活動する学生の姿は、和歌山県の観光地「南紀白浜」にありました。
アクションカメラで白浜町のとあるホテル内を撮影する彼らの活動には、SDGsとも深く関わる、現代社会において高齢者の抱える「とある社会課題」が深く関係していました。
社会福祉法人で社会課題を聞いたあの日、すべては動き出した
遡ること8か月前の2021年11月、大阪市内にある社会福祉法人四恩学園(以下、四恩学園)に、桃山学院大学社会学部ソーシャルデザイン学科(福祉)の南ゼミに所属する学生数名が訪れ、現在四恩学園が抱えている課題について情報交換をしていました。
四恩学園は、大阪市内に所在し、高齢者施設などを運営する福祉施設です。
当時は、新型コロナウイルスの感染拡大期(第5波)の真っただ中。
まだまだ先の見通せない状況の中、シ音楽線の職員の方々から学生たちに2つの課題をについて教えていただきました。
ひとつは、「感染防止対策として、外出や面会を制限されている高齢者施設に入居するお年寄りの方々」について、そしてもうひとつが「四恩学園の周辺地域でのつながりが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって極端に減っている」ことについてでした。
わたしたちにできることは何か、必死で考えた
現場の課題を聞いた学生は、すぐにこの話をゼミに持ち帰りほかの仲間にも共有し、この課題に対して「わたしたちに何ができるのか」ということを議論し始めました。
様々な意見やアイデアが出され、様々な議論が繰り広げられました。その中で学生が四恩学園を訪問し、施設内を見学したときに経験した「とあるエピソード」に全員の関心が寄せられました。
それは、施設内の特別養護老人ホームを訪れた時のこと。
事前に、新型コロナウイルスの感染対策として「約2年間、外出や外部との面会を制限している」というお話は伺っていたのですが、施設に入るや否や、入居者のお年寄りの皆さんが訪問した学生たちに目を輝かせ、たくさん話しかけてこられました。
この時訪問した学生たちは、入居者のお年寄りにとって本当に久しぶりに接する、「外部の人」だったわけです。
「外の世界に触れることが少なくなったお年寄りの皆さんに、少しでも外の世界を味わってもらいたい、その刺激を生きる力や喜び、しあわせに変えてもらいたい」
この時、ひとつのアイデアが生まれました。
「思い出の場所」、私たちが代わりに旅してきます
高齢者の方々が外出できないのであれば、代わりに自分たちがその場所へ行けばよいのではないか。
そんな発想から生まれたのが、「SHARE TABI」です。
入居者の高齢者に、これまでの人生や思い出の場所などを聞取って学生がその場所を訪れる。そして、思い出の場所を動画に撮影し、編集したものを見てもらい、まるで自分自身がその場所を訪れたような気分を味わってもらう、「模擬外出」を提供しようというのが、この「SHARE TABI」のコンセプトです。
「私たちが直接現地を訪れる」という意味を込めた「旅」という言葉と、「その場に立つ」という意味を込めた「足袋」という言葉のふたつの「TABI」を掛け合わせた企画名となりました。
この企画を、四恩学園に提案したところ「ぜひ、実現してもらいたい」との回答をいただき、早速ご協力いただける入居者さんへのインタビューが始まりました。
仲間を集める
ちょうどこの頃、四恩学園での活動について新たに学生団体を立ち上げ、学部学科を問わず仲間を集めることになりました。
「福祉マインドを持ち、一人ひとりのしあわせを実現する社会をデザインする力」は、どの学部分野で学び、将来どのような分野で仕事をすることになっても必要な力です。そのため、この機会をソーシャルデザイン学科にとどめず、全学的に活動を募集することにしました。
募集説明会には大勢の学生が参加し、この取り組みの関心の高さが伺えました。
聞き取り調査開始。一人ひとりの「人生」の物語に触れる。
き取り調査は、まず関係性を築くところからスタートしました。
聞き取りをする側の学生も、その方の大切な人生や思い出をお聞きするにあたって、慎重に話を掘り下げていきます。
おひとりの方に対する、聞取り調査は合計4回にも及びました。
聞き取り調査が終わるころには、まるで本当のおじいちゃん、おばあちゃんのような、そんな感覚になったほどです。高齢者の皆さんにとっても、昔のことを思い出しながら昔話をするのは本当に久しぶりだったようで、とても楽しそうに話されていたのが印象的でした。
思い出の場所を訪れ、撮影する。そこに、思わぬサポートが。
合計4回の聞き取り調査を経て8月2日、いよいよ動画撮影の日を迎えました。
この日は、聞き取り調査をしたおひとりの思い出の場所である、南紀白浜での撮影です。
対象となる方は、関西有数の観光地である「南紀白浜」の大型ホテルで約30年近く働いておられ、このホテルや周辺エリアが「思い出の場所」であることを教えてくださいました。
早速、このホテルに動画撮影の企画説明や撮影の許可を取ります。
しかし、問い合わせをしたところ、現在このホテルは大手の観光ホテル会社に経営権が移っており、当時のホテルのままではないことが分かりました。
しかし、ここで現在このホテルを経営している会社から、「現在とは別のホテルであるとは言え、過去にこの場所で働いていた方のために、今こうして若い学生さんが活動をされていることに強い感銘を受けました。今回の企画については、全面的にバックアップさせていただきます。」との心強いコメントをいただきました。
たった一人の「思い出」を辿る企画を通じて、新しい「つながり」が生まれる。
社会的なつながりを創出することで「一人ひとりのしあわせを実現する」という、ソーシャルデザイン学科の学びを正に実感するような体験でした。
上映会は、9月。動画を観た利用者さんの顔が、今から楽しみ。
撮影をした動画の上映会は、9月に実施する予定です。
四恩学園を訪問し、SHARE TABIの企画を提案してから10か月。
この動画を観た利用者さんの顔が、今から楽しみです!
◎ソーシャルデザイン学科の取り組みは、各種メディアでも取り上げられています
◆NHK NEWS WEB
◆日本経済新聞(全国版)
学生団体「FIOREI(フィオレイ)」について
イタリア語で「花」を意味するFioreと、ハワイの伝統的な装飾品Leiを組み合わせた、造語。
様々なFiore”個人”がLeiのようにつながり、人々が交流する活発な地域の創出を目的とした学生団体です。
桃山学院大学 社会学部ソーシャルデザイン学科(福祉)とは?
社会の高齢化に伴って団塊の世代の医療や介護のニーズが増大する「2025年問題」や、現役人口が急減する「2040年問題」に加え、現在の社会課題にもなっている「ヤングケアラー」や「貧困」など、私たちの住む現代やこれからの社会は、様々な課題であふれています。
桃山学院大学の社会学部ソーシャルデザイン学科(福祉)では、こうした状況において今、社会から強く求められているのは「福祉マインドをもって、社会的なつながりを創出」し、社会全体で「一人ひとりのしあわせ」を実現していく力を養成しています。
ソーシャルデザイン学科での学びは、様々な社会課題に世界全体で取り組み、持続可能でよりよい世界を目指そうとする、SDGsにも深く関わる学びです。
皆さんも、「一人ひとりのしあわせ」があふれる社会を、一緒にデザインしていきませんか?
桃山学院大学 社会学部ソーシャルデザイン学科(福祉)をチェック!