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野球部主務と教採試験を両立/大阪府の中学校社会科教員に

公務員や公立学校教員は社会的使命を果たす職業として、一度は目指そうと考える若者が少なくありません。しかし、採用試験では一般教養や専門知識、語学力などを総合的に試されるため、時間をかけた努力が必要です。
桃山学院大学(以下、桃大)には前向きに努力する学生が多く、毎年難関を突破しています。社会学部社会学科4年の井上裟理さんは硬式野球部の活動を支える多忙な主務の仕事をこなしながら、大阪府中学校社会科教諭の採用内定を勝ち取りました。小学生時代からの夢を実現した井上裟理さんに大学生活と教員採用試験準備を振り返ってもらいました。

◇ 小学校時代から教員にあこがれ

――いつから教員を目指していたのですか。
小学生の時に先生の姿を見て、「かっこいいなあ」と憧れ、自分も先生になりたいと思いました。中学高校でもその気持ちは変わらず、学校の先生になりたいという目標を実現するために大学進学しました。

――多くの大学の中から桃大の社会学部を選んだ理由は?
桃大のオープンキャンパスに参加し、社会学部の先生に「将来は社会科の教員になりたいんです」と相談したら、「社会学部では物事を広く考える視野を磨けるよ」と言われました。それはまさに学校の先生に求められる資質だと思ったんです。小学生のころは体育の先生になりたいと思っていたのですが、中学高校では社会科が得意だったので社会学部を選びました。自宅(和歌山県橋本市)から通える大学を探していましたが、和泉市のキャンパスまで1時間少しで通学できる立地にも魅力を感じ、桃大への進学を決めました。和歌山県から桃大に通っている学生は多いですよ。

教員の求められる「広い視野」で物事を見る目と、
社会科の教員を目指せる桃大の社会学科へ進学しました。

◇ 野球部でぶれない「軸」を確立

――大学では硬式野球部に所属しているそうですね。
小学5年から高校3年まで陸上競技部で中距離走(400㍍、800㍍)に取り組んでいましたが、陸上競技はやり切ったと感じ、大学では他のことに挑戦するつもりでした。入学した3年前はコロナの影響で課外活動は制限されていましたが、中高で体育会的な空気の中で過ごしてきたので、サークル活動には物足りなさを感じ、友だちに誘われて野球部の練習を見学しました。中井逹就監督から「4年間野球部で活動したら、教職に結びつくものがつかめるよ」と声をかけられ、そこに賭けました。唯一の女子部員として、1、2年ではマネジャー、3、4年は部の運営の中心である主務を務めています。

主務としてチームを支える硬式野球部は、
阪神大学野球連盟2023年 秋季リーグ戦【2部東】で優勝した。
(前列左から二人目が井上さん)

――部活と教員採用試験の準備の両立は大変だったでしょう。
公務員試験の準備などのために3年生で引退する部員もいますが、私は4年生の12月まで野球部の主務を続けます。部活と教員採用試験挑戦が私の大学生活の「軸」なので、自分の軸をぶれずに大切にしたいと思っています。

ただ、確かにまとまった勉強時間を確保するのは難しいので、半日練習の後や講義の空き時間に図書館で勉強し、短時間に集中して取り組みました。また府県によって採用試験の内容が異なるので、大阪府に絞って傾向を分析し、無駄のないように試験準備をしました。勉強時間の少なさを補うために、効率的な試験準備を心がけました。

朝早い時間も、夕方遅い時間も。空き時間を作っては、図書館にこもって机に向かった。

――和歌山県出身なのに大阪府にしたのですか。
教職センターの先生の紹介で大学の近くにある和泉市内の小学校で学習支援サポーターとして、子どもたちの学習のお手伝いをしてきました。大阪府の学校の現状や先生たちの姿を間近で見て、大阪でいっしょに働きたいと思ったんです。教職センターの先生らから、大阪府の試験日と重ならない県の教員採用試験も受けることを勧められましたが、大阪府に集中する方針をぶれずに貫きました。

◇ 進路は教員一本に賭ける

――民間企業などの〝滑り止め〟は受けなかったのですか。
教員以外の仕事は考えられず、民間企業の就活はまったくしませんでした。ある意味、賭けでしたが、限られた時間の中で自分のやるべきこと、やりたいことに集中しました。大阪府の教員採用試験は6月の一次試験(筆記)から2次の面接、3次の筆記、模擬授業、面接と長丁場です。10月27日に採用が決まったときは本当にほっとすると同時に、桃大の教職員の方々や、教育実習をさせていただいた母校の恩師、学習支援サポーターを務めた芦部小学校の先生方など、本当に多くの人に支えられてきたことへの感謝の気持ちでいっぱいになりました。また、ぶれずに教員採用試験に挑む強さは野球部でマネジャー、主務をさせていただく中で身に着けたと思います。

面接でも自分の武器として「野球部の4年間で培ったぶれない姿勢」を強調できたので、野球部に入っていなかったら、教員採用試験に合格できなかったかもしれません。野球部の中井監督も大恩人です。

硬式野球部の中井達就監督には、
野球部の活動を通して「ぶれない姿勢」を教えていただきました。

◇ きずなと信頼を大切に

――どんな先生になりたいですか。
子ども、保護者、同僚の教職員に信頼されることが大事だと思うので、「信頼」を軸に努力したいと思います。芦部小学校では子ども同士のつながる力が変化することを感じたので、子どもたちのきずなづくりを重視し、一人ひとりを取りこぼさない温かい学校づくりをやっていきたいです。

元校長先生で、今は本学の教職センターにおられる上野泰久先生が憧れの先生なので、上野先生のように何よりも子どもたちのことを考えて指導する先生を目指します。

「将来、どんな先生になりたいか」の質問に、「上野泰久先生です!」と即答だった井上さん。
どんな時でも「子どものことを第一」に考えておられる姿が、目標とする教員像です。

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