地域との協力関係を構築し国際理解を深める企画を推進
◇ 日本語教育隊員から奈良県で国際協力支援へ
桃山学院大学在学中、日本語教育実習プログラムの一環として台湾の輔仁大学およびフランスのセルジ・ポントワーズ大学へ留学しました。卒業と同時に日本語教員資格を取得し、カナダの学校で日本語教員や幼稚園の支援員として活動した後、保育士資格も取得。2017―2019年にJICA海外協力隊の日本語教育隊員として、インドの幼稚園から高校までの一貫校で活動しました。現在はJICAの地域の窓口役である国際協力推進員を奈良県で務めています。
仕事は、国際協力に関するご相談に乗り、JICA事業に関心がある方々と連携してイベント等を実施することです。企業と連携した展示や開発教育のワークショップ、教育現場では国際協力出前講座、自治体とはオンラインや対面のイベント等を通して開発途上国への理解促進に取り組んできました。また、JICAの国内事業(草の根技術協力事業、民間連携事業、ボランティア事業、研修員受入れ事業、開発教育支援事業等)を支援するために、地域のパートナー(自治体、大学、企業、海外協力隊経験者等)との協力関係構築を図っています。
ただ、待っていても連携先は生まれず、自ら情報を獲得して人脈を広げていくことが重要です。タイミングやチャンスを逃さないようにすること、そして情報発信を大切にしています。
◇ 企画から実施運営まで担当
奈良県内の業務は企画から実施運営まで全て任せていただいています。企画書を作成し、時期や場所の選定を行います。展示パネルや進行台本などの資料の作成、講師や実施補助の手配、チラシや報道機関向け資料を作成し、SNSやメディアへ発信しています。
責任は重いですが、3つのやりがいを感じています。
1つ目は、多様な方々と連携を図れることです。今まで接してこなかった方とも一緒に仕事をする機会が多く、自分にはない視点や気づきを与えられ、新しい発見が続いています。
2つ目は、思い描いた企画が実現することです。実のところ、私は誰からも指示を受けることがありません。そのため、私が行動しなければ何も始まりません。裏を返せば、何でもチャレンジできる環境で、自身の判断で企画を進めていくことができます。
3つ目は、誰かの役に立てると感じたときです。例えば、協力隊経験を伝えた後にいただいた感想で相手に学びがあったと知った時や、イベントや展示等の企画を通して人の心に響くようなパフォーマンスが実現できた時に、微力ながらも貢献できたと嬉しくなります。
メディアに取り上げていただくことや観覧者から直接電話で感想をいただくこともありました。また、展示パネルの貸出依頼もあり、私のような素人でも丁寧に作り込めば人の心に残るものを生み出すことができるものだと感じました。仕事を通して学びや自己実現の機会をいただくことが、やりがいに繋がっています。
◇ 十津川村で長期研修員(留学生)受け入れ
JICAでは、日本国内の大学院で高度な技術や知識の習得を目指す長期研修員と呼ばれる留学生を開発途上国から数多く受け入れています。彼らに関西をより知っていただくプログラムとして、2022年と2023年には奈良県の十津川村へお越しいただきました。以前から十津川村へアプローチしたいと考えていたため、特に熱意を込めて取り組んだプログラムでした。JICA関西の担当者と綿密な打ち合わせを重ね、十津川村内のSDGsの取り組み、日本の自然や文化、人々の暮らしについて長期研修員の理解を深めることを狙いました。参加した長期研修員が学びを深めている様子や、「来られて良かった」と話しているのを見て、胸が熱くなったことを覚えています。2023年は特に双方向の交流を意識したプログラム内容にしたため、長期研修員はもちろんのこと、十津川村の方々にも喜んでいただけたと感じています。
◇ アルバイトで費用を工面し海外へ出た学生時代
長期休みの期間にはいつも海外へ出て行くような学生生活でした。留学生をサポートするバディ制度を活用し、仲良くなった学生のいる国へ行ったこともありました。学業面では日本語教育課程を履修し、短期と長期の日本語教育実習へ参加しました。また、インドネシアでの国際ワークキャンプ(IWC)にも参加しました。アジアやヨーロッパ等へ旅して現地の方との出会いを大切にし、五感をフル活用して知見を広めました。海外へ行くためにアルバイトをいくつか掛け持ちしましたが、講義の空き時間を利用した学内のPC補助(セイントスタッフ)もその一つです。学費以外は自分で工面するため忙しくしていましたが、良い思い出です。
そんな学生生活のなか、日本語教育実習に参加した際に現地の学生と学び合いながら日本語指導に携われたことは、一番の思い出です。座学では分からなかった実践的な日本語の指導では、自分の至らなさを痛感しましたが、温かく迎え入れてくれる現地学生の優しさに救われたことが多かったです。2011年の東日本大震災の時には、海外の友人たちから数多くのメッセージをいただき、私は大丈夫だと知らせた記憶が鮮明に残っています。
◇ 多くのチャンスを与えてくれた桃山学院大学
留学生との交流や海外渡航での経験から、異文化理解が深まったと感じています。視野が広がり自己成長に繋がりました。現在の仕事は異文化理解の大切さを伝える場面が多いため、大学時代に培った経験が生きていると実感しています。
桃山学院大学は、出会いと羽ばたく機会を与えてくれた場所でした。主に国際センターを通して繋がりができた当時の留学生とは今でも交流が続いています。また、IWCへの参加、短期・長期の日本語教育実習の機会などを通じて、数多くのチャンスを与えていただきました。世界へ飛び出す後押しをしてくださったこと、また、そのためにご尽力くださった教職員のみなさまに心より感謝申し上げます。