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ジェノサイド(大虐殺)からの再生を学ぶ/アフリカ・ルワンダでフィールドスタディ

 桃山学院大学の学生5人が今夏、約30年前に〝民族対立〟から大虐殺(ジェノサイド)が起こったアフリカ・ルワンダを訪問し、虐殺の原因と背景、民族間の和解が進み経済も発展している現状と日本が学ぶべきことなどを探りました。10月18日には学内で報告会が行われ、ヘイトスピーチなどが頻発する日本とも無縁とは言えない問題の背景を考えました。

◇ 植民地統治が遠因

 ルワンダはアフリカ東部の内陸国で、面積は四国の1.4倍ほど、人口は1,263万人(2019年)です。少数派のツチと多数派のフツがいますが、実際の民族の違いではなく、植民地支配をしていたベルギーが社会的階層の違いなどを基に人為的にツチとフツの区別をし、両派の対立感情を植民地統治に利用していました。独立後もツチとフツ族の軍事的対立が続き、1994年、フツの大統領の搭乗機が撃墜されたことをきっかけに、フツがツチの虐殺を始め、3か月間に80万人が殺害されるという大惨事になりました。最終的にはツチ中心の反乱軍が勝利し、新政府を樹立。「植民地統治が悪かった。民族の対立・憎悪を終わらせよう」と民族表記をなくし、被害者も参加する裁判などの取り組みによって、ツチとフツの和解を進めました。大虐殺後に生まれた世代が6割以上になり、2010年以降の「アフリカの奇跡」と呼ばれる経済発展にも乗って、ITビジネスなども勃興し、現在は好調な経済が続いています。

ジェノサイド記念博物館を訪問

◇ 和解から経済発展へ

 本学の学生は9月上旬から10日間の日程でルワンダを訪れ、▽幼少期から国際的に活躍する子どもを育てる「ウムチョムイーザ学園」、▽首都・キガリの歴史資料館、▽1晩で1万人が殺害された教会、▽農民などの貯蓄組合を運営する、現地団体ARTCFの農村開発プロジェクト――などで、虐殺の実相やその後の和解、人々の暮らしと地域の経済を振興する取り組み、貧困に苦しむ人たちの支援などについて学びました。

ウムチョムイーザ学園を訪問
ARTCFの農村開発プロジェクトの様子を見学

 歴史資料館では亡くなった子供の遺品や最後の言葉などの展示に衝撃を受け、「メディアなどを通じた扇動の結果とし大虐殺が起きたことは、『歴史』と言えるのか。今後も起きてしまうかもしれない」と、世界各地で民族対立から起きる紛争、戦争が続いていること、日本でも周辺国との対立や国内のヘイトスピーチなどの問題も考えました。また、1万人が殺害された教会では、加害者を許そうという精神に触れ、農村開発プロジェクトでは日本とは比べ物にならない「資金」の大切さを学びました。

虐殺が行われた建物の壁には、今も生々しく銃弾の跡が残る

 学生らは、「ウムチョムイーザ学園では親の自立支援も必要だということがわかりましたが、小学生が英語でディベートし、自分の考えを持っていることに刺激を受けました」、「ルワンダの大学生と交流し、自分の意見を持つことの大切さを痛感し、イスラエルとパレスチナの紛争など世界で起こっているニュースに関心を抱くようになりました」、「30年前に大虐殺があったとは思えないほどの急速な経済の発展、ルワンダの人たちの温かい人柄が印象的でした」など、様々な感想を語りました。

現地の大学生とも意見交換

◇ 日本にも通じる課題

 同行した桃山学院大学国際センターの小峯茂嗣講師(平和構築論)は「紛争とその後の平和をいかにして構築していくかを考えるために、ルワンダを研修先に選びました。ルワンダの虐殺は少数派への憎悪をあおるプロパガンダの結果起こったので、(ヘイトスピーチなどが問題となる)今の日本にも重なるところがあるのではないでしょうか。学生たちはパレスチナ問題に関心を持つように変わるなど、様々な気付きを得たようです。来年以降もルワンダ・フィールドスタディを続ける計画です」と振り返りました。

プログラムを担当する、小峯茂嗣講師(右)

 桃山学院大学は、海外の長期、短期の留学や研修に力を入れています。コロナ禍の影響で海外渡航が難しい時期が続きましたが、今年度からルワンダ・フィールドスタディなどの海外研修を本格的に再開しています。

▼ 豊富な国際体験プログラム(国際センター)