文化財資料の保存修復の最前線を学ぶ/元興寺文化財研究所総合文化財センター
「博物館資料保存論」の授業の一環として、博物館学芸員課程受講生と井上ゼミの学生が8月3日、奈良市の公益財団法人元興寺文化財研究所総合文化財センターを見学しました。
学芸員課程は博物館や美術館などの学芸員資格の取得を目指すコースで、全学部の学生が履修できます。博物館資料保存論は、埋蔵文化財や古い文献資料、文化財級の美術品などの修復法や劣化を防ぐ保存法などを学びます。
同研究所は、国宝に指定されている稲荷山古墳出土鉄剣に金象嵌の文字が刻まれていることをX線検査で解明(1978年)するなど、科学的手法を駆使した文化財の調査や保存で我が国の考古学界をリードする研究機関の一つです。奈良市中心部にある元興寺境内の発掘調査で出土した大量の木製や紙製の資料は空気に触れると急速に劣化することから、樹脂や薬品を使った保存修復方法を確立してきました。
学生を指導している井上敏教授、稲荷山古墳鉄剣銘の解読を行った同研究所元理事で、「博物館資料保存論」のゲスト講師としてもご講義いただいている増沢文武博士の引率で、学生8人が見学に参加しました。同研究所文化財企画活用室の小村真理特任研究員から様々な材質の文化財の保存修復法の概要を説明していただき、電子顕微鏡や蛍光X線分析装置など各種機器の活用方法、繊維や木製文化財の材質の分析の解説を受けました。また、同センターで実際に取り組んでいる石造文化財や土器などの修復作業を見学し、X線撮影室、写真撮影スタジオなど大規模な施設も見せていただきました。
井上教授は「今回初めて、元興寺文化財研究所総合文化財センターを見学させていただきました。講義だけでなく、リアルに実際の文化財の保存修復作業や装置を目の前で見せていただくことで、学生の理解が深まります。9月に学内で行う博物館実習Ⅰでも小村先生に講師をお願いしています」と見学の意義と今後も同研究所に本学の博物館学芸員課程の教育に協力をお願いしていくとのことでした。