サッカー「アナリスト」として欧州遠征ーー日本サッカー協会の「テクニカルハウス」を目指す
映像やデータを使って監督、コーチの方針、戦術を選手に浸透させ、相手チームの強みと弱みを分析する――現在のサッカーは「アナリスト」と呼ばれる技術スタッフが大きな役割を担っています。サッカー部の引田真尋さん(経済学部4年)は、入学時から選手ではなく部の運営を担当する裏方を希望し、アナリスト(分析係)の道を歩んできました。11月には18歳以下日本代表チームのスペイン遠征に帯同します。高い戦術理解力とコミュニケーション能力を武器に、日本サッカー協会のテクニカルハウスのスタッフを目指しています。
◇ 桃大入学でチャンスをつかむ
引田さんは兵庫県洲本市(淡路島)で小学2年からサッカーに取り組んできました。高校ではサイドバックとしてプレーしましたが、「強豪チームではなかったし、選手としてはうまくない」と大学ではチームを運営する主務などの裏方を目指しました。欧州のプロチームに裏方のプロがいることを知り、「将来サッカーにかかわる仕事をしたい」と考えたうえでの決断でした。関東の有力大学など複数の進学先を検討していましたが、結果的に桃山に進学したことが、アナリストの道を拓いたということです。
1年次からマネジャーなどを務め、2年次には関西学生サッカー連盟の幹事として、大学リーグの運営を担当。全日本大学選抜を率いたこともある松本直也監督、井口祐貴コーチが戦術やデータの分析を重視していたことが、アナリストを目指すきっかけになりました。「アナリストという仕事があることも知りませんでしたが、井口コーチから『関西学生選抜のアナリストになれるように指導する』と言われました」と振り返ります。そして3年夏には松本監督の紹介でJリーグ・セレッソ大阪の1週間のインターンシップに参加し、プロのアナリストの仕事ぶりに触れました。「自分とはまったく違う視点で分析していることを知り、自分もやってみたいと思いました」と、意思を固めたそうです。
◇ 関西学生選抜の優勝に貢献
アナリストは相手チームと自チームの特徴を分析したうえで、対戦相手の試合動画を7試合分程度は集め、攻撃、守備のポイントとなるプレー動画をコーチングスタッフに見せます。監督らの戦術方針も踏まえて、選手に求めることを映像化して伝えます。戦術理解や分析能力はもちろんのこと、監督・コーチとだけでなく、選手がピッチ上で感じていることを把握するためのコミュニケーション力が重要だそうです。「アナリストはピッチ外から試合を客観的に見ていますが、実際にプレーしている選手がピッチで感じた主観を聞き出すことも重要です」といいます。
今年2月に行われたデンソーカップ(各地域の大学選抜チームの大会)で、アナリストを務めた関西学生選抜が6年ぶりに優勝し、「アナリストとして貢献出来ました」と確かな手ごたえを得ました。その実績が評価され、19歳以下全日本大学選抜のイタリア遠征(6月)、15歳以下日本代表の国内合宿(9月)に参加し、11月のスペイン遠征にもテクニカルスタッフとして参加するよう日本サッカー協会から要請されています。
◇ 勉強を続け将来は海外で活躍を
引田さんを指導している井口コーチは、「コミュニケーション力が評価されています。監督、コーチの意向を正確に踏まえた映像を製作できるのが彼の長所。その他のスキルについて現段階ではサッカーを様々な側面から専門的に研究している大学院生などに及ばない部分もありますが、一番大切なコミュニケーション力が彼の強みです」と評価しています。引田さんの目標は日本サッカー協会で技術面を担当する「テクニカルハウス」で働くこと。
引田さんは「桃大で松本監督や井口コーチといった、経験豊富な方々に出会ったことが、今につながっています」と感謝し、数字で分析するデータサイエンティストの勉強にも力を入れ、「将来は海外でもやってみたい。当面は日本サッカー協会の仕事を得るのが目標です」と決意を新たにしています。
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